アト秒科学
定義
高強度のフェムト秒レーザーパルスが作り出すアト秒の電子波束や、アト秒レーザーパルスを用いて、原子や分子や化学反応等における電子の超高速運動を研究したり、電子の運動を操る技術を研究したりする分野。
東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻
東京大学大学院工学系研究科 光量子科学研究センター・物理工学専攻
石川研究室が、原子力や光量子科学に関連する基礎用語から最先端の専門用語までを解説する用語集です。
高強度のフェムト秒レーザーパルスが作り出すアト秒の電子波束や、アト秒レーザーパルスを用いて、原子や分子や化学反応等における電子の超高速運動を研究したり、電子の運動を操る技術を研究したりする分野。
高強度(10の14乗W/cm2以上)のレーザー場中では、弱いレーザー場中で起こる現象の延長線上では捉えることのできない、摂動論では取り扱いが困難(非摂動論的)で、質的に大きく異なる現象が起きる。これらを高電磁場現象(あるいは高強度場現象)と呼ぶ。代表的なものとして、超閾電離、トンネルイオン化、高次高調波発生、非逐次二重電離があげられる。
高強度(10の14乗W/cm2以上)のレーザー場中では、弱いレーザー場中で起こる現象の延長線上では捉えることのできない、摂動論では取り扱いが困難(非摂動論的)で、質的に大きく異なる現象が起きる。これらを高強度場現象(あるいは高電磁場現象)と呼ぶ。代表的なものとして、超閾電離、トンネルイオン化、高次高調波発生があげられる。
外場中における自由電子の波動関数。本書では特に、レーザーパルスの振動電場中における自由電子の波動関数。
トンネルイオン化において、電子がポテンシャル障壁を通り抜けるのに要する時間スケールと、レーザー電場が振動する時間スケールの比較で定義される無次元量。レーザーの波長が可視光領域近傍の場合には、トンネルイオン化と超閾電離のいずれが優勢であるかの目安になる。
空間的に振幅が変化する電磁波中におかれた荷電粒子が感じるポテンシャルエネルギー。ポンデロモーティブポテンシャルともいう。このポテンシャルが荷電粒子に及ぼす力を、ポンデロモーティブ力と呼ぶ。振動電場中におかれた荷電粒子の振動エネルギーに対応し、量子力学的には動的シュタルク効果として理解することができる。
原子や分子が光子を一度に複数吸収してイオン化する多光子電離の一種で、イオン化に最低限必要な数より多くの光子を吸収してイオン化する現象。
トンネルイオン化[tunneling ionization]とはトンネル電離とも呼び、光子の吸収ではなく光の強い電場によるイオン化を指します。
高強度(>1014 W/cm2)のレーザーに照射された原子や分子の中にいる電子が感じるポテンシャルは、レーザー電場によって大きくゆがめられます。電子は、そのようにして形作られるポテンシャル障壁を、量子力学的なトンネル効果によって通り抜けて原子や分子の外に出ることができ、結果としてイオン化が起こります。このような、光子の吸収ではなく、光の強い電場によるイオン化を、トンネルイオン化(トンネル電離)と呼びます。
高次高調波発生[high-harmonic generation]とは、high-harmonic generationの他、high-order harmonic generationもしくはHHGとも表現され、高強度(>1014 W/cm2)のフェムト秒レーザーパルスを気体に照射すると、波長変換によって高次の倍波(照射した光が持つ振動数の整数倍の振動数を持つ光)が発生する現象を指します。また、この際に発生する短波長の光を高次高調波と呼びます。
高次高調波発生は非摂動論的に非線形な過程で、摂動論的高調波とは著しく異なる以下のような特徴があります。
高次高調波発生はアト秒レーザーパルスの発生原理であり、また、高調波スペクトルから、電子状態やダイナミクスについての情報を取得することができます。