篠原康さん、ポスト「京」の萌芽的課題に採択!
2016年6月24日、石川・佐藤研究室の特任研究員である篠原康さんの研究提案が、文部科学省の「ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発」萌芽的課題に採択されました。概要は以下のとおりです。
萌芽的課題名:基礎科学のフロンティア – 極限への挑戦
提案課題名:複合相関が織りなす極限マテリアル – 原子スケールからのアプローチ
サブ課題A:複合相関マテリアルのための電子状態計算基盤 – DFT を超えて超高精度へ
(研究代表者、東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教 松下雄一郎)
サブ課題B:極限高圧下マテリアルの相変態シミュレーション – 室温超伝導に向けて
(東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 助教 明石遼介)
サブ課題C:強光子場中マテリアルの原子論的シミュレーション – 波動関数理論から臨む光と物質の相互作用
(東京大学大学院工学系研究科付属光量子科学研究センター 特任研究員 篠原康)
採択されたほかの課題にベテラン研究者が名を連ねる中、篠原康さんらは3名全員が30代前半という若さでの快挙であり、今後が非常に期待されています。
<篠原康さんが担当するサブ課題Cの概要>
強光子場中にさらされた固体に超高速高強度光に駆動される固体の量子ダイナミクスのメカニズムを波動関数理論(TD-CASSCF法を想定)に基づく原子論的シミュレーションから明らかにするため、シミュレーションアプリの実装と応用研究を行います。本課題では「京」で開発を進めたARTED (https://github.com/ARTED) をベースに、ポスト「京」での成果創出に向けて「京」での超大規模並列環境を利用して開発を遂行します。
また、当研究室の石川顕一教授と佐藤健特任講師は、波動関数理論の量子ダイナミクス適用事例の豊富な経験からアドバイスを行います。
サブ課題Cの目標は、強光子場中の物質における電子相関・電子散乱を考慮した励起状態計算手法を開発することで、
(i) 非常に高精度な TD-CASSCF の実時間シミュレーションから、シンプルな物質に対する緩和過程の定量的な評価をすること
(ii) 電子緩和の影響を取り込みつつ、計算コストを抑えた近似解法および現象論的模型の開発をすること
であり、そのアウトプット成果を、複雑な物質における緩和過程の定量的評価、高付加価値レーザー加工などの強光子場下におけるマテリアル制御のシミュレーター開発、および開発したシミュレーターを用いた現実のマテリアル制御過程への貢献、などに応用することを目指しています。
文部科学省の発表(2016年6月24日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/06/1373171.htm